夜の読書感想文:『いたいのいたいの、とんでゆけ』と燃える夜のコーヒー

夜の読書感想文

就寝前のひととき夢に至るまでの道すがら

休日の心休まるひととき

つかの間の時間、現実と乖離させて空想の世界を見渡す感覚

私の読んだ本の中でおすすめしたい一冊です

いたいのいたいの、とんでゆけ

自分で殺した女の子に恋をするなんて、どうかしている。

「私、死んじゃいました。どうしてくれるんですか?」
 何もかもに見捨てられて一人きりになった二十二歳の秋、僕は殺人犯になってしまった――はずだった。
 僕に殺された少女は、死の瞬間を“先送り”することによって十日間の猶予を得た。彼女はその貴重な十日間を、自分の人生を台無しにした連中への復讐に捧げる決意をする。
「当然あなたにも手伝ってもらいますよ、人殺しさん」
 復讐を重ねていく中で、僕たちは知らず知らずのうちに、二人の出会いの裏に隠された真実に近付いていく。それは哀しくも温かい日々の記憶。そしてあの日の「さよなら」。

メディアワークス文庫より引用

この本のタイトルを見た時、私の胸に去来したのは「傷を抱えた人たちの物語なのかな」という静かな予感でした。そして「いたいのいたいの、とんでゆけ」と、誰かに優しく投げかけてもらったのはいつだっただろうか、と過去の自分に思いを馳せました。

三日間の幸福を読み終え、作者の描く世界に惹かれて流れるように手に取った、そんな夜の物語です。

小さな体の傷は時間が経てば癒えるけれど、目に見えない心の傷はただ塞がっただけで、決して消えることはない。この本は、そんな真実を静かに語りかけてきます。
痛みを先送りにして生きていくことはできても、その傷そのものが無かったことにはならない。
癒えるには、誰かの優しさや、そっとかけられた些細な言葉が必要なのだと、改めて気づかされました。

もしこの本をコーヒーに例えるなら、特定の豆ではなく、アイリッシュ・コーヒーやカフェ・ロワイヤルのようなコーヒーカクテルがぴったりだと感じます。
コーヒーの暗さと苦さが物語の世界観を、そして痛みを一時的に忘れさせてくれるアルコールが、登場人物たちの心を描いているようでした。
特に、幻想的な青い炎を燃やしながら、ほのかな甘さで夜を彩るカフェ・ロワイヤルは、この物語に登場する人々の、どこか儚くも美しい生き様に重なります。

過去に傷を受けながらも今を生きる人へ、この本をおすすめしたいです。
心の傷は先送りしても自然には癒えないこと、そして誰かを思う心が何よりも美しいこと。
この本が、あなたの心に優しく寄り添い、ほんの少しでも癒しをもたらしてくれることを願っています。

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