夜の読書感想文:『怪盗フラヌールの巡回』と、複雑に溶け合うカフェオレの夜

夜の読書感想文

就寝前のひととき夢に至るまでの道すがら

休日の心休まるひととき

つかの間の時間、現実と乖離させて空想の世界を見渡す感覚

私の読んだ本の中でおすすめしたい一冊です

怪盗フラヌールの巡回

亡き父親の正体は大怪盗だった――!? 長男の「ぼく」は、傷ついた弟妹と愛する乳母のため二代目怪盗フラヌールを襲名。持ち主にお宝を戻す“返却活動”を開始する。次なる標的は、天才研究者が集う海底大学。忍びこめたかと思いきや、初代怪盗フラヌールを唯一捕らえたベテラン刑事と、新世代の名(ウルトラ)探偵が立ちはだかり、不可能犯罪まで発生! 二代目怪盗フラヌールは、数多の謎を解き明かし、任務を完遂できるのか!? 衝撃の怪盗ミステリー、ここに開幕!

講談社より引用

本屋のミステリーフェアの棚で、その本は私を呼んでいました。
「フラヌール」というネーミングセンスに惹かれ、作者が学生時代から大好きな西尾維新さんだと知ると、もう抗うことはできません。
何より心を奪われたのは、帯に書かれた「盗む?違うね、返すのさ。」という挑戦的な謳い文句。
「怪盗」なのに「リターンミステリー」という矛盾に、私の好奇心は最高潮に達しました。
ページを開けば、相変わらずの言葉遊びの天才ぶり。台詞回しの一つ一つに感心し、唸りながら読み進めていきました。

『怪盗フラヌールの巡回』は、怪盗というファンタジー要素に、竜宮城や玉手箱といったおとぎ話を現代風にアレンジした空想の世界が織りなす物語です。
初代怪盗フラヌールこと「あるき野散歩」という名前に思わずツッコミたくなったり(フラヌールはフランス語で「散歩をする人」なので、そのままではないかと)、二代目への代替わりの展開に「これは何かあるぞ」と作者の手のひらで転がされているような気持ちになります。
登場人物は皆、名前も台詞回しも個性的で、一度見聞きすれば忘れられないほどの強烈な印象を残します。
密室、殺人、怪盗、探偵、警察、記者。ミステリーの王道キャラクターが勢揃いする中で、物語が一体どう進行していくのか、ワクワクが止まらずページを捲る手が止まりませんでした。

もしこの本を一杯のコーヒーに例えるなら、カフェオレをおすすめしたいです。
フランス語で「ミルク入りのコーヒー」と見たままの飲み物ですが、黒く苦いコーヒーと白く甘いミルクという真逆の色が合わさった様は、主人公の怪盗が持つ「悪」と「義賊」という二つの側面を象徴しているように感じます。
二代目を襲名しながらも、その犯行の目的は父への反抗という矛盾した感情の描写とも一致するでしょう。
また、物語を通して主人公が度重なるストレスに見舞われることを思うと、胃への負担を少しでも軽減できるカフェオレを選びたいという、ささやかな願いも込めました。

特に言葉遊びが好きな方、そしてミステリー物をあらかた読み尽くし、そろそろ目新しさを感じたい方に、ぜひこの一冊を読んでいただきたいです。西尾維新さんの紡ぐ独特の世界観が、あなたの夜の読書時間にウルトラな刺激を与えてくれることを願っています。
ハッピーゴーラッキー。

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