夜の読書感想文:『フクロウと夜の王』と中深煎りグアテマラの夜

夜の読書感想文

就寝前のひととき夢に至るまでの道すがら

休日の心休まるひととき

つかの間の時間、現実と乖離させて空想の世界を見渡す感覚

私の読んだ本の中でおすすめしたい一冊です

ミミズクと夜の王

伝説は、夜の森と共に――。完全版が紡ぐ新しい始まり。
魔物のはびこる夜の森に、一人の少女が訪れる。額には「332」の焼き印、両手両足には外されることのない鎖。自らをミミズクと名乗る少女は、美しき魔物の王にその身を差し出す。願いはたった、一つだけ。「あたしのこと、食べてくれませんかぁ」
死にたがりやのミミズクと、人間嫌いの夜の王。全ての始まりは、美しい月夜だった。それは、絶望の果てからはじまる小さな少女の崩壊と再生の物語。
加筆修正の末、ある結末に辿り着いた外伝『鳥籠巫女と聖剣の騎士』を併録。

Rakutenブックスより引用

その本は、ある日、本屋さんの片隅で私の目に飛び込んできました。
表紙に描かれた幻想的なイラストと、惹きつけられるような「夜の王」というタイトル。
その雰囲気に魅せられ、迷うことなく手に取った一冊です。
そしてページを開けば、まさにそのタイトルにふさわしい、夜の恐ろしさと同時に広がる果てしない世界に、私はあっという間に引き込まれていきました。

『フクロウと夜の王』は、まるで絵本を読み聞かせられているかのような、どこか柔らかいファンタジーです。
登場人物たちは皆、その息遣いや鼓動が聞こえてくるかのように鮮やかに描かれ、物語の中で確かに息づいていました。


特に印象的だったのは、痛みや涙の意味を知らない少女が、大切なものと出会い、泥臭くも美しく成長していく姿です。夢を見ているような、どこか上の空な少女の喋り方が好きでした。
そして、本当に大事なものを知った時、足りない言葉を必死に紡ごうとするその姿に、私の心は深く打たれました。

もしこの本を一杯のコーヒーに例えるなら、中深煎りのグアテマラが最もふさわしいでしょう。
初めて飲むコーヒーの苦味が、この物語が持つ夜の恐ろしさや厳しさを表しているようです。
しかし、夜の闇に目が慣れていくように、その苦味に慣れ親しむと、奥から顔を出すチョコレートのような甘苦さと深いコク、そして長く続く余韻が楽しめます。
それはまるで、物語の奥底に秘められた、夜の王の優しさや温かさに触れるような体験でした。

この本は、本来相容れないはずのもの同士の愛の物語です。
純粋な心に触れたい方、そしてあどけない優しさに胸を打たれたい方に、ぜひおすすめしたいと思います。
夜の静けさの中で、この物語があなたの心にそっと寄り添い、温かい光を灯してくれることを願っています。

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